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コラム

グローバルの知見から融資業務改革を支援するnCino 最初の一歩を踏み出すための参考にしてほしい海外企業のDXジャーニー
〜オペレーション効率の改善で生まれた余力をトップライン向上に〜

nCino株式会社 ストラテジック パートナーシップ アンド アライアンス ディレクター 中尾貴之
アクセンチュア株式会社 ビジネスコンサルティング本部 コンサルティンググループ マネジング・ディレクター 木時直氏

■日本の金融機関が抱えるビジネス課題

――グローバルでは多くの金融機関がnCinoの法人融資ソリューションを採用しています。2019年の日本法人設立以降、どのようにビジネスを展開してきたのでしょうか。

中尾:実質的な活動が始まったのは2020年の後半からです。日本法人代表野村の就任をきっかけに、国内の金融機関の関係者を招き、大々的に実施したロンチイベントを開催し、きらぼし銀行様、あおぞら銀行様、SMBC信託銀行様が採用を決定しました。同じ金融機関でも業態やユースケースの異なるお客様が導入していることは、nCinoの汎用性の表れと考えています。米国発のSaaSのためか、お客様からは頻繁に日本での適用可能性を聞かれますが、これについては自信を持って「できる」と答えています。

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――組織が短期間で成果を得るにはパートナーの力が重要ですよね。アクセンチュア様のようなコンサルティングファームにどんな役割を期待していますか。

中尾:プラットフォーマーとして、私たちは製品強化に力を入れていますが、nCinoはインストールして終わりという製品ではありません。業務とシステムがわかっているパートナーのサポートを得て、トランスフォーメーションを実行して、初めて価値を発揮できる。Time to Value(トランスフォーメーションのプロにお願いして、早期にDXを実現し投資対効果を早期に回収する)を短縮し、お客様に価値を提供する上で不可欠な存在がコンサルティングファームなのです。

――木時様は日本の金融機関の現状をよくご存知と伺っています。日本の金融機関の課題をどのようにお考えでしょうか。

木時:まず、人口減少で国内市場のパイを大きく広げることが難しいことがあります。解決の足枷になっているのが旧来型のシステムで、結果的にオペレーションも旧態依然の効率的とは程遠いものになっています。もう1つ、トップラインへの貢献も課題です。融資だけでなく、付加価値を提供するビジネスモデルに変えていかなくては達成できません。この2つの課題はコインの表と裏のようなもので、オペレーションを効率化して余力を作り、トップライン向上を実現する必要があるのです。

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■金融機関に一番ハマる? アクセンチュアの「2スピードアプローチ」

――メガバンクと地銀など、業態で違いがあるのでしょうか。

木時:地銀の場合、特定商圏のお客様への融資がビジネスの中心で、扱っている商品もオペレーションも比較的シンプルな傾向があります。ただし、積極的なシステム投資をしにくい土壌があります。一方、メガバンクはニーズの多様なお客様を多く抱えていて、個別要望に応えるためにオペレーションやシステムが複雑なものになっています。とは言え、古いシステムがオペレーションの足を引っ張っているのは同じです。

中尾:日本の金融機関が抱える課題については、私も同感です。とは言え、その課題は以前の海外の金融機関が抱えていたものと同じでもあるのです。だとすると、解決の処方箋は同じはず。そこで、私たちはアクセンチュア様のようなパートナーと共に、ビッグバン・アプローチ一辺倒ではなく、最初のスモールサクセスを実現するためのナレッジを提供することに重きを置いたアプローチをしています。

――スモールサクセスの切り口はどうやって見つけていますか。

木時:アクセンチュアでは「2スピードアプローチ」の取り組みを提唱しています。オペレーションでもシステムでも、既存の仕組みを変えるのは時間がかかるものです。その取り組みとは別に、全く新しいものをもう1つ作ります。例えば、新商品を立ち上げるとしましょう。その裏側の仕組みは、オペレーションでもシステムでも、しがらみがないので新しいものが早くできますよね。そして、新商品を支持するお客様が増えるに従って、古い方を徐々に縮小していくわけです。全ての業種業態に適用できるアプローチですが、金融機関に一番フィットすると思います。とは言え、一定期間は二重投資になるので、既存の部分が残っている間は我慢が必要です。

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中尾:これまで改革に意欲的な人ほど、何度も壁にぶつかってきたと思います。それでも、やりたいと思ってくれるキーパーソンは必ずいます。この数年の全国における営業活動において、金融機関だからと言って、一律に保守的な方ばかりでないと強く実感しています。

■かつては同じ悩みを抱えていた海外の金融機関

――日本の他の業種業態に比べて改革のスピードが遅いと言われる金融機関ですが、取り組みを加速するには何が必要ですか。

木時:nSight 2023nCinoのお客様とパートナーが集まる米国開催年次カンファレンス)に参加して驚いたのが、グローバルの金融機関の参加者の熱量の高さでした。加えて、海外の金融機関の融資業務にnCinoが定着しているとわかったことも気づきでした。日本の金融機関にチャレンジが難しいカルチャーがあるにしても、5年前とは違う組織内部の意識の変化を感じる機会が増えています。起爆剤になるのは中尾さんの言うような成功体験でしょうね。成功体験を得られれば、賛同者が増えてくる。時間はかかると思いますが頑張りたいです。

中尾:海外の金融機関も保守的なのは同じです。違うのは、改革をドライブする人の存在だと思います。アーリーアダプターを探しているのは、トップダウンではない日本の組織文化の中で、改革のアクセルを踏む存在になるからです。私もnSightに参加して、その候補者が日本の各地にいることを確信しました。参加した日本の金融機関のお客様は「実際、どうなの?」とnCino導入に関する疑問を口にしていたのですが、米国以外でも、欧州やオセアニアなど、様々な国の金融機関のお客様が異口同音に「最初はうまく行かないと思っていたけど、やってみたらできたよ」と答えていたのです。

改革の途中、お客様が直面する具体的な問題をどう乗り越えたのか、nCinoには世界中の多くのナレッジが蓄積されています。一方で、お客様の言葉には経験者ならではの重みがある。これから日本でも成果を出す組織が増えていくと思いますし、その成功体験を後に続く人たちと直接共有しいってほしいですね。

nSight2023会場の様子
アクセンチュアはじめ多くのグローバルパートナーのブースも出展

nCino導入が終わってからやってくる改革の本番

――成果を出している海外の金融機関から、どんなことを学んでほしいですか。

木時:ともすれば、日本のDXではシステム導入が目的化してしまう傾向がありますが、nCinoを導入することは目的ではありません。ビジネスで何を変えたいか。それがスタート地点です。全体最適の視点を持つ人に音頭を取ってもらい、改革を実践して、ノウハウを蓄積してほしい。これは外部への開発委託で失われたナレッジを組織に取り戻し、内製化を進めていくことにも繋がります。内製化は、付加価値の部分に焦点を当てたチャレンジを成功させるための鍵になるでしょう。

中尾:今までの発注文化を変え、業務とITの両方がわかる人を育てることは大事ですね。内製化は組織が変わる好循環を作ることにも繋がります。短期的なアウトソーシングまで否定するつもりはないのですが、nCinoを導入してからが改革の本番ですからね。

――今後2社の協業を深めることを通して、日本の金融機関にどのような価値を届けたいですか。

木時:1つの成功体験ができれば、組織全体に広がります。日本ではこれから実績を作っていく段階ですが、海外の金融機関同様に、その最終形態を実現してもらうことに取り組んでいきたいですね。

中尾:日本でもファンコミュニティを盛り上げていきたいです。今は少数派でも「じゃあやろう」と決めた人たちは、ビジネスを変えると決めた人たちです。コミュニティの力で、迷っている組織の背中を押してあげられるよう、実績を増やしていきます。