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World FinTech Festival 2021で紹介した日本進出の
ベストプラクティス、代表の野村が登壇

現在日本政府は「国際金融都市構想」を掲げ、優れたフィンテック企業や金融のプロフェッショナルを積極的に日本に誘致する取り組みを進めており、世界最大のフィンテックイベント「World FinTech Festival 2021」に登壇した弊社代表の野村は、海外フィンテック企業の誘致支援に従事する金融庁金融庁総合政策局フィンテック室松澤氏を聞き手に、マネーソー米岡氏、島根銀行小川氏と共にこれまでの取り組み内容を振り返りました。

■合弁パートナーからのノウハウ提供を受け、開拓してきた日本市場

nCino株式会社 代表取締役社長 野村逸紀

それぞれの自己紹介の後、野村からはnCinoの日本進出の経緯を紹介しました。2019年末に設立されたnCino日本法人は、米本社と日本のベンチャーキャピタルとの2社の合同出資でできた合弁会社です。本社がパートナーに選んだのは、B2B SaaS に特化したJapan Cloud社でした。Japan Cloudには、salesforce.com、Oracle、SAP Concurなど、多くのITベンダーの日本進出を成功させた実績があります。私たちnCinoも、外資系企業が日本法人を設立する際に必要な社長人材の採用から、事業拡大に不可欠なビジネスプロセスの整備、広報活動に必要なメディアとの関係に至るまで、日本市場への定着に必要なあらゆるノウハウの提供を受けました。

野村がnCinoの代表に就任したのは、日本法人設立から約1年後の2020年11月。以来、日本の金融機関向けに製品ローカライズを進めてきました。それと並行して力を入れたのが、日本法人のローンチイベントの開催準備です。2021年2月4日に行われた「nCino Summit Japan 2021」の成功は、日本の金融機関とその関係者の皆様にnCinoを知ってもらう上で、大きなマイルストーンになったと考えています。

広報活動を重視した背景には、nCinoが日本進出した時、全く顧客基盤のない状態からスタートしなければならなかったことがあります。通常、外資系ITベンダーが日本法人を設立する際、グローバル契約で日本オフィスのお客様が使っている場合が多々ありますが、nCinoの場合はその例に当てはまらなかったのです。ゼロからのスタートとなったこのイベントでは、当初の集客目標を300名に設定していたのですが、コロナ禍で対面からオンラインでの開催に切り替えを余儀なくされました。ところが、蓋を開けてみれば、実際の登録者数は1,100名を超え、当日も900名以上のお客様に参加してもらうことができたのです。

このイベントの成果は、nCinoがどんな志を持ち、世界の金融機関にどんな貢献をしているか、そして日本の金融機関への貢献イメージを理解してもらえたことにあったと思います。と言うのも、日本の金融機関のお客様は、日本で実績がある製品かをとても重視します。ところがnCinoの場合、融資業務のプロセスをサポートするものですから、「ちょっと使ってみようか」と気軽に試すことは難しい。加えて、導入前に業務プロセスの変革も必要になり、セールスライフサイクルは必然的に長くなります。

これまではお客様との対話に多くの時間をかけてきましたが、その成果は徐々に実りつつあります。今は複数のお客様に採用を決定いただいた状況ですが、これからはもっと多くの日本の金融機関の業務に貢献していくつもりです。

■アクセラレーションプログラム参加で得たパートナー企業とのビジネス機会

マネーソー 日本法人代表 米岡和希氏

ベンチャーキャピタルのノウハウを活用したのがnCinoだとすると、アクセラレーターをうまく活用する方針を選択したのがシンガポールに本拠地を置くMoneythorでしょう。

2013年に創業したMoneythorは、金融機関からデジタルチャネルを通して一人ひとりのお客様にレコメンデーションを送るツールを提供しています。既にDBS銀行、スタンダードチャータード銀行、オーストラリア・ニュージーランド銀行などに導入実績を持ち、日本では2020年末に大垣共立銀行が導入を決定。2021年6月からは、同行が提供する「OKBアプリ」上で「Lifit(ライフィット)」の提供サポートを始めています。

同社は2020年12月にNavis Capitalから資金調達を受けましたが、それ以前は自分たちだけの資金でビジネスを成長させてきました。日本進出は、2017年に東京都が主催したアクセラレーションプログラム「フィンテックビジネスキャンプ東京」への選出がきっかけになりました。そして直近では、Plug and Play Japanが運営するプログラム「Summer/Fall 2019 Fintech Batch 3」にも選出され、パートナー企業との連携を進めてきました。それが実を結ぶ形となったのが、2020年2月の日本ユニシスとのパートナー契約です。先に挙げた大垣共立銀行の導入では、このパートナーシップが奏功しています。

Moneythorの場合、最初から日本の金融業界との接点があったわけではありません。米岡氏は「アクセラレーションプログラムへの参加を通じ、先進的なアプリを提供している金融機関に絞って、営業活動に取り組んできました」と、これまでを振り返ります。日本ユニシスとの協業は、日本の金融機関がベンダーに手厚いサポートを求めることを踏まえての戦略だったとのこと。金融機関への直接的なアプローチと並行し、ベンダーにも同時並行でアプローチするようにした結果が、最初のお客様獲得につながったと米岡氏は考えています。

2018年から始まった本格的な日本進出を振り返り、「当時は市場が成熟しておらず、多くの金融機関に興味を持ってもらうことはできても、ほとんどが情報収集の段階にありました」と語る米岡氏。「2021年に入り、導入を前提に検討するケースが増えてきていると感じます」と、市場の変化に今後への手応えを示しました。

■資本提携が結んだ海外フィンテック企業の技術との縁

島根銀行 人事財務グループ付次世代バンキングシステム担当 部長 小川隆浩氏

最後に登壇した小川氏は、島根銀行が進める次世代バンキングシステムの開発プロジェクトをリードする1人です。現在もプロジェクトは進行中ですが、海外フィンテック企業にとっての顧客の立場から、これまでに得た海外製品導入に関する知見を共有しました。

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島根銀行は島根県松江市に本店を置く第二地方銀行で、地域住民からは「しまぎん」の愛称で親しまれる存在です。現在の同行が最も力を注ぐのは、2019年9月に資本提携を受けたSBIホールディングスのノウハウを活用した金融商品提案力の強化です。現在も、収益性改善に向けた様々な取り組みを進めていますが、その中の1つがフロントエンドのオープンシステムと勘定系システムの連携を実現するOpenLegacyを用いたAPIの開発でした。

国内金融機関にとって、老朽化したレガシーシステムは共通の悩みの種と言えるでしょう。同行の勘定系システムもメインフレームで構築されたもの。しかも「長年にわたり、他の国内金融機関が使っている製品とは異なる独自性の高いものを使っていました」と、小川氏は言います。レガシーシステムとオープンシステムの連携では作業時間と人件費の問題に直面しますが、その解決のためにSBIから紹介してもらった製品がOpenLegacyでした。

野村や米岡氏の指摘にあったように、日本の金融機関はベンダーへの業務依存度が高く、実績の少ない製品の採用リスクを重く見る傾向があります。懸念を払拭するため、島根銀行はPoCを実施して接続成功を確認してから、実際のAPI開発に着手するアプローチでプロジェクトを進めました。2021年6月からは、OpenLegacyで開発したAPIを次々に本番稼働させています。

日本の金融機関が海外ベンダー製品を導入するプロジェクトを進める際、最も気になるのは言葉の壁かもしれません。同行の場合も、英語のわかるエンジニアにプロジェクトに参加してもらう必要がありましたが、「基本的に向かうべき方向にベクトルが揃っていたので、言葉の壁を意識する場面は少なかったと思います」と、小川氏は振り返りました。OpenLegacyは同行にとって初めての製品でしたが、新しいことにメンバーがチャレンジし、成功できたことは大きな自信につながったようです。

今回の3人のパネリストの話は、海外ベンダー、日本の金融機関、そして周辺からビジネスを支えるパートナー各社それぞれで受け止め方が変わると思いますが、日本の金融機関がDXのためのテクノロジーを必要としていることは確かです。他のパネリストの話を参考にしつつ、日本の金融機関の挑戦をnCinoとしてもサポートしていきます。